背景 

スペイン地質鉱山研究所(IGME-CSIC)のGEOSMART研究チームは、地質災害・気候変動部門に所属し、 モデリング、人工知能、リモートセンシングを用いて 活発な地質過程を研究しています。研究テーマの一つは、活動断層系における地震物理と地震ハザードです。断層形状や構造的複雑さが地震の発生開始、破壊伝播、長期的な地震活動へどう影響するかを理解することを目的としています。さらに、活動的な地質過程に関する科学的知見と実用的なツールを生み出し、防災・リスク低減に役立つ最新情報を社会へ提供することも目標です。

地震は長い時間スケールで進行し、直接観測できない深部で発生するため、数値シミュレーションは断層の相互作用や破壊伝播を調べる上で不可欠です。こうしたシミュレーションには、自然界の複雑さを表現した現実的な3次元断層形状が必要です。

このワークフローでは、正確な3次元断層モデルの構築と適切な計算メッシュの生成が重要な工程です。作成した形状は、地震破壊ダイナミクスや長期地震サイクルを解析する専用数値ソルバーの入力として利用されます。

図1:El Salvador Fault Systemを深さ9 kmまで表現した3次元モデル。物理ベース地震シミュレーションの構造基盤として使用されます。

 

課題 

物理ベース地震シミュレーションには、現実的な3次元断層面と、数値ソルバーが直接利用できる計算メッシュが必要です。自然の断層系は、形状や方向の異なる複数の断層セグメントが相互作用するため、構造的に複雑であり、正確な幾何モデルの構築が難しいという課題があります。

さらに、後段の解析で要求される特定の三角形分割を生成する必要があります。メッシングツールによっては必要な三角形分割を作れず、STL形式が解析コードで必須でも、きれいに出力できない場合があります。そのため、地質学的な現実性と数値ワークフローとの互換性を同時に満たすメッシュ準備が大きなボトルネックになります。

解決方法 

Coreform Cubitは、複雑な3次元断層形状の構築と、地震シミュレーションに必要な三角形メッシュ生成を効率化しました。特に解析コードが要求するSTL形式へ直接出力できることが重要でした。また、構造的に複雑な断層系を表現できる幾何処理の柔軟性と、後段の数値解析に適したメッシュ生成機能を提供しました。

構造地質分野で一般的に使われる他ツールと比べ、このプロジェクトではCubitがメッシング要件により適していました。他ツールも地質モデル構築には有効ですが、必要な三角形分割を生成できない場合や、要求形式へきれいに出力できない場合があります。Cubitはモデル準備の効率と信頼性を高め、安定したメッシュ生成、幾何制御、シンプルな出力を組み合わせることで、この用途に適した選択肢となりました。

Results

図2:地表でマッピングされた断層トレースから、Coreform Cubitで断層面を構築する例。

ワークフローは、地表の断層トレースを定義し、地理座標を持つ線としてCoreform Cubitへ取り込むところから始まります。Cubitで3次元断層面を構築し、異なる解像度の断層系を表す三角形メッシュを生成します。これらをSTL形式で出力し、物理ベース地震シミュレーションコードの入力として使用します。

得られたシミュレーションにより、複雑な断層形状が地震挙動へ与える影響を調べられます。Cubitで生成した形状とメッシュは、現実的な断層構造をシミュレーションへ取り込むための重要な要素です。

図3:より単純化した断層系モデルを用いた地震サイクルシミュレーションから得られた合成地震活動分布の例。

まとめ

Coreform Cubitは、このプロジェクトの物理ベース地震シミュレーションで必要となる複雑な3次元断層形状の構築とメッシングに重要な役割を果たしました。高品質な三角形メッシュを安定して生成し、解析コード互換形式へ出力できることでモデル準備を効率化し、現実的な断層構造をシミュレーションへ取り込めるようになりました。

この機能は、中米の地殻地域において、断層形状と構造的複雑さが地震挙動へどのように影響するかを研究する基盤となっています。